2020/03/05  
VECLOS EPT-700_01(バーンインノイズ未再生時のレビュー)

 EPT-700を買ってみた。VECLOSの真空エンクロージャーイヤホンだ。購入した理由は真空エンクロージャーで面白そうと言うのもそうだが、AH-C820では高音の歪がひどくて気になること。これはコンプライにしても気になる。ER4SRは音は良いが、かけ心地が良くないのであまり使っていないこと。そういった理由で砲弾型のイヤピースタイプのもので良さそうなものを探していた。このVECLOSのイヤホンは以前から良いなと思っていたのだが、ちょうど安くなっていたので購入した。
 このシリーズにはEPT-700, EPT-500, EPS-700, EPS-500の4種類があり、それぞれハウジングの素材がチタンかステンレスか、ユニットがフルレンジか2wayかの違いがある。私はER4SRをすでに持っているので、似たようなのはつまらないと言う理由で2wayのEPT-700, EPS-700のどちらかを選ぶことにした。あとはチタンかステンレスかだが、レビューを見ていると、音の傾向ではEPT-700がソフト傾向、EPS-700がクリア傾向らしい。EPT-700はソフト傾向で音像のクッキリ感が不足すると言うのが気になるところだが、私が欲しいのは癖の少なさなので、「チタンの方が癖が少なくナチュラル。ステンレスは固有のキャラクターが強めに付く」と言うことだったのでチタンのEPT-700にした。それにチタンの方が軽いので少しは快適になるかもしれない。ER4SRより音よかったらヘッドホンのほうも買おうかなと思っている。


  EPT-700の音

(バーンインノイズは使わず、普通の音楽を30時間、+6dB程度の音量で流しています。バーンインノイズを使った音の変化は後日書きます。と言うよりバーンインノイズ自体が未完成状態で、nightowl carbonのレビューも上げていない状態です。バーンインノイズの完成と同時にアップ予定です。)
 さて、その音。結論を言うと、ER4SRよりも音が良い。もともとER4SRより高額なイヤホンなので不思議ではないのですが、ER4SRよりかなり上のレベルの音。4万5000円の価格であっても価格差以上の音質差がある。解像度はHD650(MUGEN-HPC579M)の125段前後上、つまりHD650(標準ケーブル)の216段前後上くらいのレベル。奥行きは25mってところ。解像度の割に奥行きは若干浅いかな。バーンインノイズを使っていない状態のER4SRは解像度でHD650(標準ケーブル)の76段上、奥行き7mってところなので解像度や奥行きは各段のレベル差がある。解像度はHD650とER4SRとの差分の3倍近い差があるし、ER4SRを圧倒していると言って良いレベル差だ。もっともHD650とER4SRは大した音質差はないと言う人もいるので、その辺の感覚は人それぞれだと思うけど。+18dBのバーンインノイズを使ったER4SR(解像度でHD650(標準ケーブル)の180段前後上、奥行き25m)でも明らかに音数少ないし若干濁って聴こえる。私の作ったバーンインノイズはかなり自信があったので「ER4SR使ってバーンインノイズ鳴らしてたら、ノーマル状態のイヤホンは何持ってきても勝てないだろうな」と思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。ちょっと悔しいが音は素直に評価しないとね。「EPT-700は全く何もしてないノーマル状態でこの音鳴るの?すごいねぇ。」と思う。

 どういった傾向か?に関してはイヤピースによって変わってきます。イヤピースの最適なサイズは人によって違いますが、私の場合はMサイズのシリコンイヤピースでER4SRに近いバランス、Lサイズでより低音を盛ったバランスになります。Lサイズの場合ダイナミック型とみまがうくらい力強い音が出ますが、解像度が落ちて、パツンパツン感が出てドラムやタムなど打楽器が不自然に聴こえます。そのあたりの質感を考えて私はMサイズで聴いています。この評価もMサイズのシリコンイヤピースのものです。コンプライは使っていません。

 また、他レビューでは「ナチュラルウォーム&クリア」と言う評があったのですが、ウォームと言うと、HD650のように付帯音で音が汚れてもやっとした感じをポジティブにウォームと表現することがあるので、HD650っぽい音なのかな?と思ったのですが全然違いました。どちらかと言うとER4SRの音色を良くして、しなやかさを足した感じで、音源本来の柔らかさをより表現できるようになったと言ったところ。個人的にはウォームと言うよりはしなやかと感じた。だから「ナチュラルウォーム&クリア」と言えば確かにその通りなんだけど、ウォームと言うのはあくまで他の兄弟機と比べた相対的な評価でなんでしょう。また、この機種は2wayだが、特に2wayだからと言って不自然なところは見当たらなかった。少なくとも「フルレンジでこういう音なんです」と言われたら納得してしまうと思う。また、注意点として、下に書いてありますがアンプでも傾向はかなり変わります。だから、上で「ウォームと書いてあるレビューがあるけど私はそう感じなかった」と書いたけど、その人の環境ではそういう音が出ている可能性が高いです。このレビューはPMA-60で聴いた印象です。

 褒めてばかりではあれなので、このイヤホンのダメなところを上げてみよう。。。。。。ない。。。ないです。一生懸命ダメなところ探すんだけど正直ここがダメってところはない。完璧な音か?最高の音か?と言われたらそりゃ全力で否定するが、これがイヤホンであると言う前提に立って、この価格でこの音出されたら文句は言えないし、実際文句付けるところもない。正直に言うと、もっと「しなやかさ」と「ゆとり」を増して表現力をを上げてほしいのだが、SRH1540と比べると「しなやかさ」はたぶん互角だと思うが、だが「ゆとり」では負けてしまう。イヤホンは小さいユニットなのでどうしてもいっぱいいっぱいに鳴っているゆとりのない苦しい感じが出てしまう。だがER4SRよりは「ゆとり」のある鳴り方をするし、「ゆとり」のある鳴り方ではダイナミック2発のAH-C820と互角だろうか、なのでイヤホンの中ではかなりゆとりのある方ではないかと思う。全体的な音色の良さで言うとSRH1540より上でnightowl carbonと互角か、こちらの方が自然な分上かもしれない。それでいて解像度は圧倒的で、イヤホンにしてはゆとりのある鳴り方をする。絶対的な評価でなく他のヘッドホンやイヤホンとの相対評価では文句のつけられない音だ。


  その他/装着感など。

・かけ心地は良い。ER4SRより良いのは当然だが、AH-C820よりも良い。水筒のような筒を耳に突っ込むだけなのでイメージしやすいと思う。

・エージングは、そんなに掛からない。はじめは高音がシャラ付いたり、ボーカルが粗く開放感の乏しい圧迫感のあるなり方だったが、12時間ほど普通に鳴らしたら解消していった。まぁ、30時間しか鳴らしてないけどさw もしかしたらまだ変わるかもしれないけど、早くレビュー上げたかったので早めに切り上げて書いた。それほど素晴らしい音だった。

・nightowl carbonと同じでアンプとの相性が結構あるっぽい。CXA80のヘッドホンアンプだとnightowl carbonと同じで音質がかなり悪くなる。nightowl carbonのように頭内定位になる感じでなくて、奥行きはかろうじて1mくらいはある感じ。無いに等しいけど。このイヤホンはnightowl carbonと同じくアンプによって音のキャラクターがごろごろ変わる。このイヤホンは濁りに敏感でアンプの音が濁っているとSNが悪くなり音質がかなり落ちるようだ。使用するアンプによっては「何だか濁った音のイヤホンだな」とイヤホンの問題と勘違いされるかもしれない。試したのはPMA-60, DR.DAC3(エージング用ドノーマル), RME AIOですが、この中ではPMA-60が一番音が良かった。他の2つは悪くないのだが濁りが気になった。nightowl carbonと同じく「ここが駄目」「ここが気になる」とかそういう欠点がないアンプを使うのが良いだろう。ただ、nightowl carbonほど-側に音質が極端に揺れて「なんだこの糞音は?」となるわけではなく、音質が悪くても「何だかいまいちだな」と言うレベルにとどまるのでnightowl carbonほど気難しいヘッドホンではないと感じている。


  総じて言うと


 EPT-700は傑作だ。ER4SRを圧倒する音が出る。

 ではEPT-700は買いかどうか? 当然買いだ!気になるなら即買っておくべき。今すぐ!今すぐ大至急だ!音質が優れていると言うのは当然の理由なのだが、2020/03/31でサーモスがオーディオ事業から撤退し、VECLOSブランドを廃止する。つまりサーモスがオーディオ事業を再開するか、他社が魔法瓶の技術を応用した真空ハウジングのイヤホン/ヘッドホンを出さない限り、この真空ハウジングを使った個性ある製品が市場から消えてしまうのである。真空ハウジングがどれほどの効果があるのかは分からないが、出てくる音は非常に素晴らしいものだ。後継機種がなく類似製品もないのなら欲しくても買えなくなってしまうので買えるうちに買っておくのが良いだろう。私はもうヘッドホンの方も買ってしまった。もっとも気長に待てばVECLOSブランドが復活してまた新製品を出してくれるかもしれないが。






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2020/03/05 執筆    
2020/03/05 公開